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デザインと情報
この年末年始に読んだ本に『家族を容れるハコ 家族を越えるハコ』上野千鶴子、『デザインのデザイン』原研哉があります。

『家族を容れるハコ 家族を越えるハコ』は著者が社会学者の立場から現代住宅を批判したもので、気鋭の建築家との対話を経ることで具体的な議論が刺激的に展開されています。
氏はジェンダー的な議論からはじまって近代的家族がすでに解体していることを述べ、にも関わらず住宅は旧態依然としたままであることを論難しています。
普通なら一般論として、その家族制度を自明のものとして与えられる家に唯唯諾諾と住まう人たちに矛先が向くのですが、ここで論難されるのはその家をつくっている建築家な訳で一面、耳の痛い話ではあります。

『デザインのデザイン』は教育者としての顔も持つデザイナーが自身の作品や企画展の解説を交えつつ、デザインとは何かということを論じたものです。
その中で氏はあらゆるデザイン活動はコミュニケーションの問題にかかわるもので、デザインとはそのコミュニケーションにふさわしいメディアを適正に選び、そこにさまざまな「情報」を適正に盛り込むことだとします。これも大変刺激的でした。

ここでふと考えました。デザインを広義にとらえれば当然建築設計も入る。では例えば住宅をメディアとするならば、どのようなコミュニケーションが成立していて、そのメディアにはどういった「情報」が盛り込まれているのだろうか。

『デザインの〜』の中に日本人の住空間に対する意識の低さに嘆くくだりがあります。これは以前どこかで書きましたが、日本では『住む』ということをろくに教育されずにきているということ。そこにきて住宅産業の欲望を刺激するイメージに踊らされているということに関係ありそうです。

この欲望を刺激するイメージというのはまさにデザインされた「情報」で、欲望を刺激するというコミュニケーションが発生しているわけですが、氏によるとそれはデザイン活動が悪い方向に循環している例だということになるようです(第五章 欲望のエデュケーション)。

理想的には住に関する意識がある一定の水準にあって、それを満たした上で+αしたところでデザインされた商品が開発されていけば、どんどんハイレベルなデザインが流通し、またそれがユーザー側に一段上のセンスを育むということをここでは指摘したいようです。

さて切り口を少し変えて、住宅デザインを3つのレベルに分けて考えてみます(そう単純化できるものでもないのですが論を明快にするため)。1つは外観デザイン。2つ目は内部空間のデザイン。3つ目は空間の配列、これは内部空間相互の関係性ですが各々外部空間との関係性も含めたいと思います。

そうすると『デザインの〜』でその対象とできるのは2つ目までにとどまっているように考えられます。3つ目まで考え方を展開して適用していくことは可能かもしれませんが、少なくともここでは著者の眼中にはないように思えます。

『家族を容れる〜』に登場する建築家に山本理顕氏がいます。氏は空間は良くも悪くも中で生活する人を拘束するものだと説きます。つまり近代家族制を空間的に保証するように住宅はつくられ続けてきたということで、氏は従来のそういった空間を崩す実作をいろいろ試みられています。ここでの焦点が3つ目の空間の配列ということになります。

この空間の配列に盛り込まれている「情報」がそこに住む人の生活様式となりますが、『家族を容れる〜』の論に引き戻して考えると家族のありよう、家族間相互の人間関係、また家族外との社会的な人間関係が「情報」として盛り込まれているということになりましょう。

そしてどういったコミュニケーションが成立しているかというと山本氏風にいうと規制または強制ということになりますか。

そう単純に3項目に分けられないとしたのは、こういった要素は2つ目までの項目にも多少なりと関係があると考えられる(表徴として?)からですが、2つ目までは概ね機能と表現ということに集約できそうなので差別化しました。

主にドアノブやバスタブ、外部でいうなら屋根のように、機能を満足した上で形態をどうするか、装飾はどうするか。
言い換えれば、ドアノブには回して押して、入る振る舞いをおこさせる機能的な「情報」、屋根には雨や日射を避けるシェルターという機能的な「情報」、その上で自己の嗜好、スタイルやステイタスを「情報」として付加する。
ドアノブのようにユーザーと接するものはその行為自体コミュニケーションであろうし、嗜好などを表現することは自身以外の人とのコミュニケーションでしょう。外観は日常的に接触することがないので表現によるコミュニケーションということになろうか。
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by O-noli | 2009-01-08 22:07 | 家について考える

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