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大阪・アート・カレイドスコープ2007
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昨日、春休みに入った幼い下の娘を引きずり回して大阪・アート・カレイドスコープ2007の北浜〜東横堀〜府庁〜府立現代美術センターと回ってきました。
会期ももう明日までとなり、すべり込み。ほかもちょこちょこ見ましたが、芝川ビルが見れていないのが心残りです。今回の工程の目玉は北浜証券取引所と府庁本館で展開する招聘作家フェリチェ・ヴァリーニの作品です。

それぞれの空間では壁や柱に色彩の断片が散らばっています。それらを空間内のある1点から眺めると写真のようなカタチが浮かび上がります。

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ここで行われていることは、遠近法空間においてある1点から描くべき図形を投影したスクリーンを仮定する。しかし、実際にはそのスクリーンの背後にある実際の画面(柱・壁など)に歪んだままその図形を定着することです。

実物を見る前から、ジョルジュ・ルースというフランスの作家のことを考えていました。

ルースは使われなくなった建家の室内を実際にペイントしてしまいます。作品制作の最初にカメラを据え、そのカメラを覗きながら、描く絵のエッジのポイントを打つ位置を指示します。それで大体のエッジが描けたら大勢で一気に描きます。

また取り壊されたり、改装される室内に一時的に描かれる作品なので作品としてはフィルムに焼き付けて残すことを前提とし、フレームの中は完全に絵画として構成されつくしています。

そして日本では震災後の神戸で仕事をしているように、深く場所と結びつき多くのボランティアの手を借り長期滞在して作品を仕上げます。本人は世界中を飛び回って作品をつくり続けていて、日本ではその後、長野、東京、名古屋で仕事しているようです。

それと比較してヴァリーニはどうでしょう。かたや重文級の建物でかたや部分保存された建家内でのテンポラリーなインスタレーションです。実際に描くことができるはずはなく、また使われている建物なのであまり制作に時間をかけるわけにもいきません。

実物を見ると貼り合わせた紙に着色しそれを建物の壁や柱に貼り付けています。想像するにビューポイントに投射機を据え、その投影にあわせて着色した紙をぺたぺたと貼ったのでしょう。

このお手軽感が今回のアート・カレイドスコープ2007全てに通底していて、どうも見応えがありませんでした(芝川ビル除く)。これはおそらく作家側の問題ではなく、展示する場所の制限の問題でしょうが、企画がいいだけにもう少しつっこんでほしかったところです。

ただヴァリーニの手法にも良い点が2つあります。比較的手軽に制作できるので展開できる場所の選択肢が増えること。また、観る側が実際にその場に立って観て、発見と驚きを感じることができることです。これはルースにはなかった利点ですし、今回の企画内容に打ってつけの特性だと思われます。

アート・カレイドスコープ2007が実り多きものであったと言えるためにも、是非とも同企画と作家のバージョンアップで来年のアート・カレイドスコープがなされることを望みます。
by O-noli | 2007-03-20 19:37 | art

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